Rolex Air-King (ロレックス エアキング)の歴史
ロレックスの中でも少し違う立ち位置のエアキング。その名前の通り航空機と密接な関係がある時計です。
そんなエアキングはどのように生まれ、現在まで続くモデルになったのかを見ていきましょう。
エアキングのはじまり
ROLEX Air-King ロレックス エアキング。その歴史を紐解くと、航空界黄金期と呼ばれる1930年代にまで遡ります。
1920~1930年代は「航空の黄金期」と呼ばれた時代で、それまでは軍事目的として発展を遂げてきた航空機でしたが、この頃から「民間の旅客輸送」という目的で各国が競い航空機が大きく発展しました。
本格的な旅客機が登場したのは1930年代の半ば頃から。
その代表的な航空機と言えば、ドイツのユンカースJu52(ルフトハンザの主力旅客機として使われていました)やアメリカのダグラスDC-3(ダグラス・クラフト社 現ボーイング社)など空の歴史を変えた現代的旅客機が誕生。ちなみにダグラスDC-3は事実上、世界で最初の本格的商業旅客機と言われています。
Ju 52 / Junkers
DC-3 / Douglas Aircraft Company
1930年代の終わり頃~40年代の中頃までは第2次世界大戦中のため、これらの航空機も軍事用として転用されたり軍事目的で使われたりしていましたが1930年代の開戦前や終戦後に民間旅客機として活躍しました。
そんな航空の黄金期の1930年代はこれまで陸路の移動が当たり前でしたが、ようやく「空の旅」が普及し始めた時代。
この時代は航空機が現在のような性能を持たず、まだまだ発展途上にありましたが航空の歴史的な記録を生み出した多くのパイロットの腕にはロレックスのオイスターウォッチがありました。
エアキングの誕生
そんな黄金期のパイオニアたちへのオマージュとして誕生したのがエアキング。
エアキングは現行モデルにも存在しているモデルの中で、最も古いペットネームの時計。
その歴史は1945年のRef.4925/4499などまで遡ります。
最初期にはAir-King以外にも複数モデル存在したようでAir-〇〇というモデルが数モデルあるようです。
ダイアルの表記が「 OYSTER AIR-KING 」となってますね。手書きで全ての文字が大文字になっているのが分かるでしょうか?
またアラビア全数字で短針・長針も細くて長い。時代を感じますね。
Air-King 6552
そして1950年代前半にRef.6552が登場します。
このRef.6552はCal.1030が入っています。Cal.1030といえば世界初の両方向巻上げ式の自動巻きムーブメントとして有名です。
楔(くさび)形の針、ブルースティールの秒針が特徴的。6時位置には「 SUPER PRECISION 」と書かれています。
ムーブメントの順番的に Cal.600系→Cal.1030→Cal.1530 という順番なので、このRef.6522がref.5500より前に販売されていたのではないか?と推測されます。
楔形の針とか、デザイン的にもこちらのほうが古い要素が入ってますもんね。このあたりのモデルまで知っているという人は相当マニアックですので、さらっとこんなモデルもあったということを知っておくと良いかもです。
Air-King 5500
ROLEX Air-King エアキング Ref.5500 (1957年~1989年)
1957年に発売されたAir-King Ref.5500ですが、このモデルが一番良く知られたエアキングですね。
34mmケースにシンプルなスムーズベゼル・プラスチック風防・オイスターブレスを兼ね備えたエアキング 5500。
Air-King エアキング 5500は1957年~1989年まで販売されていたというロングセラーモデル。
文字盤に「SUPER PRECISION」と書かれているものはCal.1530、「PRECISION」と書かれているものはCal.1520と言われています。
年代の古い順番的には「SUPER PRECISION」→「PRECISION」ですね。
このSUPER PRECISION、先ほど上で紹介したRef.6522が同じCal.1530を載せていて「SUPER PRECISION」と書かれていたので、その流れを汲んでいるのではないかと思われます。
6時位置にある表記を見ると「PRECISION」だけの表記なので、ムーブメントは...
Cal.1520ですね。
Cal.1520はノンクロノメーター仕様ながら20年以上も作られた信頼性の高いムーブメントで、非常に人気の高いサブマリーナーRef.5513やイギリス軍向けに作られたサブマリーナー Ref.5517にも搭載されています。
1970年代にはハック機能が搭載され、1972年製造のこの時計も時刻合わせの際には秒針が止まります。
Ref.5500と同時期には様々なバリエーションのエアキングが販売されていました。例えば日付けを追加したモデルRef.5700 エアキングデイトや金張りモデルのRef.5506など。
1970年代半ばには別のバリエーションが登場し、ゴールドキャップのエアキング Ref.5520が登場するなどバラエティに富んでますね。
このエアキング5500は比較的今でも出回っている数が多いので買いやすい価格帯っていうのが良いんです。
Air-King 14000
ロングセラーモデルとなったRef.5500の次の世代のモデルが発表されたのは1989年。30年以上販売されていたエアキング 5500に代わり新モデルとして発表されたのがRef.14000とRef.14010です。
ROLEX Air-King エアキング Ref.14000 (1990年~2000年)
スムースベゼルのRef.14000
ROLEX Air-King エアキング Ref.14010 (1990年~2000年)
ファインリーエンジンターンドベゼルがRef.14010
このRef.14000/Ref.14010の発表でRef.5500であったデイト付きモデルや金張り、コンビモデルなどを廃止してステンレスモデルのみのシンプルなデザインに立ち返りました。
Back to Basicですね。
そして5桁(Ref14○○○)モデルになったタイミングでムーブメントがCal.1520からCal.3000のハイビートムーブメントに変更され、風防もサファイアガラスへとアップデート。
より耐久性や精度、メンテンナス性がアップしました。
Ref.14000/14010は1990年から発売され、マイナーチェンジモデルが出る2000年まで生産されました。
Air-King 14000M
Air-King Ref.14000のマイナーチェンジモデル(改良版)、「Ref.14000M」が発表されたのは2001年。このエアキング 14000Mは2001年~2007年まで販売されました。
ROLEX Air-King エアキング 14000M Salmon Dial (2001年~2007年)
Ref.14000と14000Mでマイナーチェンジされた点は何かというと、一番大きな違いはムーブメントが変わったこと。
デザイン面の変更は殆どありませんでしたが、ムーブメントがCal.3130へと変更されています。
てんぷと言われる部分を支えるブリッジが2つになり(ツインブリッジ)、より安定性とメンテナンス性が高まりました。
ラグのところにあったバネ棒を通す穴が無くなりました。写真の通り穴が無くなったことで見た目もスッキリしてますね。
もうひとつの変更点としてガラス風防の6時位置にロレックスの王冠ロゴの透かしが入りました。
おすすめのエアキングは14000と14000M
エアキングを検討する時にアルビトロがお薦めしたいのが1990年台以降に販売されていた、5桁のモデル。
Ref.14000/14010などでももちろん、ムーブメントにもこだわりたいという方にはCal.3130が入っている「Ref.14000M/14010M」が良いんじゃないでしょうか?
ではAir-King エアキング Ref.14000M,14010Mを詳しく見てみましょう。
ROLEX Air-King エアキング 14000M White Roman Dial (2001年~2007年)
植字のインデックスの内側にローマ数字もプリントされた、スモールローマンとも形容できる珍しいデザインのダイアル。
ROLEX Air-King エアキング 14000M Salmon Dial (2001年~2007年)
少し黄色がかった薄いピンク色のダイアルで、海外ではサーモンダイアル(Salmon Dial)と言われています。それをレザーストラップにしてみました。
グレーのストラップと合わせると、落ち着いた大人な雰囲気に。
ROLEX Air-King エアキング 14010M Black Dial (2001年~2007年)
ブラックダイアルにシンプルなバーインデックス。ダイアルや針がとてもシンプルなのでファインリーエンジンターンドベゼルがアクセントになっていて、かなりオシャレ。
34mmという少し控えめなケース径なのでダイアルにデザインが入っていたり、カラーでも派手さは一切出ずに、かえってそれがアクセントになると思います。
Air-King 114200 / 114210の登場
2007年にRef.14000Mに代わり、新たなエアキングのモデルRef.114200/114210が発表されます。
ROLEX Air-King エアキング Ref.114200 (2007年~2014年)
2007年~2014年まで販売されていたRef.114200。
ROLEX Air-King エアキング Ref.114210 (2007年~2014年)
主な変更点としてはムーブメントがノンクロノメーターからC.O.S.C認定クロノメーターのものになり(どちらもCal.3130)、ケースサイズは34mmのままですがデザインが丸みを帯びた少しボリュームのあるデザインへ、フラッシュフィットがブレスとの一体型に、そしてバックルがツインロック式に変更されました。
Air-King エアキングの6桁モデル(Ref.114200/114210/114234/114234G)は2014年に生産終了されるとともに、34mmのオイスターパーペチュアルのシリーズに集約されることとなりました。
34mmケースのAir-Kingは2014年で終了
ROLEX Air-King エアキング Ref.114234 (2007年~2014年 )
スムースベゼルのRef.114200、エンジンターンドベゼルのRef.114210 (2007年~2014年)、18kWGのフルーテッドベゼルとステンレスのコンビモデルRef.114234、114234のダイヤ付きモデルRef.114234G。
これら全てのモデルが2014年で生産終了。34mmケースのエアキングは姿を消しました。
Air-Kingの復活 Ref.116900
2014年の生産終了で「エアキング」というモデルはロレックスのラインナップからは無くなったと思われていましたが、その2年後の2016年に40mmケースのRef.116900となってエアキングが復活します。
ROLEX Air-King エアキング Ref.116900 (2016年~ )
エアキング 116900の特徴として、ミルガウスと同じ40mmケース・Cal.3131を使っていること。
ミルガウスと言えば1000ガウスにも耐えられるという、とても耐磁性に優れたモデルとして有名ですが、このエアキング116900もミルガウスのケースを使い、ムーブメントも通常のロレックスムーブメントには使われない耐磁性の高い素材の部品を使った特別なムーブメントです。
前の世代とはサイズやデザインなども大きく変わり、新しいエアキングと言えるモデル。
「ROLEX」の文字と秒針がロレックスのブランドカラーであるグリーンになっているところがポイントです。
終わりに
ということで、1930年代のエアキングの始まりとなったモデルから現行モデルまでを見てきました。
今でも根強い人気があるエアキングですが、アルビトロがお薦めするのは34mmケースの5桁モデル。Ref.5500~Ref.14000Mまでのモデルですね。
その理由はスッキリとしたケースデザインやサイズ感が自分の腕に着けた時にバッチリはまるから。服と合わせてみた時にすんなりといくのが上に上げたモデルなんです。(単純に格好良いっていうのもありますが)
どうせエアキングを買うなら34mmが良い、っていう方が多いと思います。エアキングの良いところをもっと上げるとするなら文字盤のバリエーションが多いところ。
ベーシックなシルバー以外にもブルーやブラック、サーモン、ホワイト(ローマンダイアル)などなど選べるのも良し。ステンレスブレスを外してNATOや革ベルトなんかにするともっと楽しめます。
この少し控えめな34mmケースのエアキング。ロレックスを初めて買うっていう方にもおすすめですので、ぜひ候補に入れてみて下さいね。