ROLEXムーブメントの歴史 Vol.1
ロレックスのムーブメントの歴史を振り返ると、ロレックス創業者のハンス・ウィルスドルフが1905年に時計商社である「ウィルスドルフ&デイビス」を設立した際にはジャン・エグラー社のムーブメントを使用していました。
1910年、ロレックスはムーブメントの品質向上を目指しクロノメーター精度にこだわった結果、腕時計としては初のスイスクロノメーター歩度公認検定局からクロノメーターの公式証明書を獲得しました。
1920年に時計製造で世界的に有名なジュネーブに社を移し、モントレ・ロレックス (Montres Rolex S.A.)を設立しました。
1926年には王冠ロゴを使い始め、また同年には防水性や防塵性を備えた「オイスターケース」の特許を申請し、世界初の防水腕時計となる「Rolex Oyster」を開発。
翌年の1927年にはダイアルやケース・ムーブメントにロレックス銘が入った時計を着けたイギリス人女性スイマー「メルセデス・グライツ」がドーバー海峡を泳いで渡ったことが話題になったことで一気に世界の注目を集めました。
この成功のおかげでオイスターケースのみならず、ムーブメントの正確性や頑丈さが認知されました。
1931年には現在まで続く「パーペチュアルムーブメント」を開発。
これは世界初の自動巻き機構を備えたムーブメントで、自動巻き時計の元となっていると言っても過言では無いと思います。
1945年、ダイアルにデイトジャスト機構が付いた初の自動巻き時計「ロレックス デイトジャスト」が発売されました。
ロレックスが開発をした「オイスターケース」「パーペチュアル機構」「デイトジャスト」は現在にも続く技術。
ムーブメントの大まかな構造自体は変わること無くブラッシュアップされていっているのがロレックスのムーブメントです。
それではロレックスのムーブメントはどうのような物なのかを見ていきましょう。
まずはプレシジョンに代表される手巻きのムーブメント。
黎明期の頃にはCal.600系や700系といったムーブメントが使われていました。
Cal.600 ムーブメントはエグラー社が製造し、Alpina(アルピナ) 819やGruen(グリュエン) 819と同じムーブメントでRolex向けにはRolex 600という名前で1920年代後半〜1930年代後半まで製造されていました。
1940〜50年代にはロレックス専用のムーブメントCal.700(sub second=スモールセコンド)やCal.710(sweep second=センターセコンド)が登場します。
Cal.600やCal.700系のムーブメントを使用していた初期の頃から、ロレックスムーブメントの特徴として「ブレゲ巻上げヒゲ」にこだわって採用をしていること。
生産性やコストの面から考えると「平ヒゲ」を採用した方が良いのですが、ロレックスは初期の頃から一貫して時計の精度という点にこだわっているため、たとえコストが高くなっても「巻き上げヒゲ」を採用しています。
巻上げヒゲは高い工作精度が無いと製造ができない部品、かつコストが高く大量生産がなかなか難しいもの。
これをパテック・フィリップやランゲ・アンド・ゾーネなどの最高級品に使うのではなく工業製品の位置づけの時計全てに採用しているというのがロレックス ムーブメントの凄さですね。
2000年には自社生産した、パラクロムヒゲゼンマイをデイトナのCal.4130を搭載しました。また2005年には磁気の影響を受けにくいブルーパラクロムゼンマイをGMTマスターIIのCal.3186に搭載するなど、さらに進化を続けています。
少し話がそれましたが、黎明期のころのCal.600やCal.700といったムーブメントは厚みが少し厚かったものをさらに薄型にしたムーブメントを開発しました。
それが手巻きの最終形と言われる1200系のベースとなるムーブメント「Cal.1000」。
そのCal.1000をさらに進化させたのがCal.1210・Cal.1215・Cal.1220・Cal.1225 です。
それでは、ロレックス手巻きムーブメントの完成形と呼ばれるCal.1200系のムーブメントを写真で見ていきましょう。
ROLEX Oyster Date PRECISION Ref.6694
ロレックスの手巻きモデル プレシジョンの6694。
この時計にはCal.1210が入っています。ノンデイトの手巻きムーブ。
Cal.1210はオイスター プレシジョンの他にオイスター スピードキングやオイスター ロイヤルなどにも使われています。
なんとこのCal.1210というムーブメント、1950年に登場してから1980年代まで製造されていたんです。
30数年間も作り続けられたということが、このムーブメントの完成度や信頼性の高さを表してますよね。
マメ情報ですが、Cal.○○○○の末尾が「ゼロ」の場合はノンデイト(日付なし)、「5」の場合はデイト有りになります。
かなりシンプルな構造と部品数です。
ROLEX Oyster Royal Precision 6427
1930年代〜1960年代まで生産されていたRoyal ロイヤル銘がついたプレシジョン。
この時計はRoyalシリーズの中でも後期にあたるアイボリーダイアルの62年製。
Cal.1210の次のムーブメントCal.1220との違いは振動数。
Cal.1210は1秒間に5振動=毎時18,000振動でCal.1220は5.5振動=毎時19,800振動という違いがあります。
Cal.1220番台のムーブメントは1960年代に登場しました。
手巻きのデイト無しムーブメントなので故障が少なく、整備しやすいのでメンテナンスをしっかりとすれば長く使えます。
次はデイト付きのCal.1215。
デイト付きのムーブメントはこの下にカレンダーディスクが入っています。
Cal.1215の次のムーブメントCal.1225を見てみましょう。
こちらもデイト無しのCal.1210やCal.1220と同様に振動数の違いだけです。
Cal.1225が使われている時計はどんなものがあるかと言うと、
Rolex Oyster Precision 6694 リネンダイアル
こちらもRolex Oyster Precision 6694 ネイビーリネンダイアル
これ以外にもRef.6694には数多くのバリエーションが存在しています。
Cal.600,Cal.700から始まり、Cal.1000、さらにCal.1000をベースとしたCal.1200系ムーブメントがロレックスの手巻きムーブメントの歴史です。
「普段使いに向いている時計」ということを考えると、1950年代-1980年代の長期に渡り製造されていたCal.1200番台のムーブメントが修理や精度、耐震性など総合的に考えて最も適していると思います。
Cal.1200番台以前のムーブメントとなると修理パーツの問題が出てくるので、できれば1960年代以降ぐらいのプレシジョンがおすすめです。
こんな感じでさらっとロレックスの手巻きムーブメントについて見てきましたがVol.2では自動巻きムーブメントについて書いていきたいと思います。
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