オーバーホールとは?

オーバーホールとは、ざっくり言うと一度全てバラして(分解)して洗浄、組み立てや調整を行うこと。

時計のオーバーホールはムーブメントはもちろん外装もきれいにすることができます。

言葉だけではなかなか分からないですよね。

それでは実際の時計をバラしてオーバーホールをしている様子を見てみましょう。

ムーブメントはすべて職人が手作業でひとつずつネジや部品をバラしています。

キズをつけないように注意しながらなので、丁寧な作業が求められます。

熟練の職人さんは丁寧な上にスピードが早いのが特徴。あっという間にバラしていくんです。

GMTマスターではない別のロレックスの手巻きムーブメントですが、ムーブメントのネジを緩めている様子。

ネジの大きさは1mmにも満たないものばかり。見てるだけで肩がこってきますね。

こんな作業をどんな高級品でも難なくやってしまうので、それだけ経験と腕がすごいということです。

別のGMTマスターをバラしている途中の状態

手巻き→自動巻き→クロノグラフの順に部品点数が多くなり、修理にかかる時間も長くなります。

クロノグラフの修理料金が高額になってしまうのは職人さんの作業時間が長くなってしまうからなんです。

修理料金は概ね職人さんの作業時間に比例すると思ってもらって良いと思います。

例外が2つあります。ひとつは、パテックフィリップやランゲ・アンド・ゾーネなどの高級時計。

作業自体がすべてシビアになるのでこれはしょうがないですよね。

そしてもうひとつが、精度がどうしても出ないムーブメントやかなり古いムーブメントなど。

精度調整に時間がかかったり、替えの部品が無い場合は部品自体を直したり、最悪の場合は部品を作ったりして大変手間がかかるから。

かなりキレイな個体ですね。こういう場合は多くの場合オーバーホールのみで大丈夫です。

部品交換が必要ないので(パッキンは消耗品なので交換します)修理料金は抑えられます。

定期的にオーバーホールをして下さいっていうのは、そういうことです。

右の渦を巻いている長い物体は一体何か?と思うかもしてませんが、これが「ゼンマイ」と呼ばれるものです。

このゼンマイというのはムーブメントのどこに入っているのかな?と思いますよね。

香箱と呼ばれるゼンマイを収める部品を開けています。

実はこんな小さな丸い箱の中に収められているんです。

先ほどの香箱の中にこんな長いゼンマイが入っています。

この長いゼンマイをローターを利用して巻き上げを行い、グルグルと巻いていきます。

その巻き上がったゼンマイが解(ほど)ける力を利用して歯車などの部品を動かして針を進めている、という原理。

少し話がそれました。ムーブメントをバラしていく途中でもうひとつ大切な作業があります。

それが「予備洗浄」と呼ばれるものです。この予備洗浄の段階であらかた汚れを落とすんですね。

完全にバラし終えると、専用の機械で部品を完全に洗浄していきます。

職人の手によってまずは手で汚れを落とします。
こちらも予備洗浄をしているところ。

分解を進める過程で部品を欠けや歪みなどが無いかをひとつひとつチェックしていきます。

かなり小さな部品ですので顕微鏡を使って調べています。

こんな小さな部品をひとつひとつ調べています

部品に問題があれば交換するか、もしくは工具を使って直します。

このように手作業で部品を修理したりするんです。こんな作業はベテランの修理職人だからこそ、ですよね。

精密部品専用の超音波洗浄機。家庭用のものとは違いプロ向けなのですごいお値段がします。

この機械を使って部品の油汚れなどを完全に落としてキレイな状態にします。

洗浄が終わると組み立ての作業に入ります。

洗浄が終わると、バラしたのとは逆に、順々に組み上げていきます。

組み上げていく時に新しい潤滑油を注油します。

組立をしたら、精度調整や防水検査などを行うという流れです。

オーバーホールの流れを一通り見てきましたが、これとは別に磨き(ポリッシュ)作業もあります。

磨き作業はこれまた職人さんの腕がモロに出てしまう作業ですので、信頼できるお店に頼みましょうね。

オーバーホールの流れは分かったところで別の時計のオーバーホールも見てみましょう。

タグ・ホイヤーの前身、ホイヤーの伝説的クロノグラフのAutavia (オータヴィア)。

インディ500のスポンサーだったタバコブランドのViceroy (ヴァイセロイ)のキャンペーンとして販売されたのがこの1163Vです。

ホイヤーの代名詞でもある、世界初自動巻きクロノグラフのCal.11を搭載。

その世界初の自動巻きクロノグラフ Cal.11がこのムーブメント。 いつもお世話になっている松野時計店さんにオーバーホールをお願いしました。 オーバーホールの時の様子をブログにご紹介頂いたのでアルビトロのブログでもそのままご紹介しますね。 (いつもありがとうございます。)文章も面白いのでサクサクと読み進められます。


自動巻群。分解しながら様子を見ていきます。オータヴィアは自動巻クロノグラフの世界初?だったっけそんな感じなので、構造がかなり特殊です。 この写真では外していますが、自動巻ローターが小さいマイクロローターというものを使っています。

手で巻くと真ん中にある歯車がスリップする構造で、巻く感触がちょっと重めな感じです。 下の二枚の歯車がクラッチギア、だったかな。作業したのが結構前なので曖昧です。 こんなブログを参考にしている人がいるとは思えませんが、参考にしてはいけません。

分解しました。

年数は60年代?ぐらいなのですが、状態は綺麗です。以前一度同じようなモデルを紹介しましたが、そちらも綺麗でした。

組み上げます。

まずは時刻機構から。特に問題は無く順調です。・・・書く事もありません。

自動巻部分を組みました。

これです、これ。右上にある扇状のパーツがマイクロローターです。こんなに小さいんです。 このマイクロローターが腕の動きをゼンマイに伝えるわけですが、この構造だと状態によっては巻き不足になりがちです。

状態ってのは使い込んであるかどうか。摩耗してきていると交換が必要なんですが、部品がありませんのでその場合には手巻で補助が必要です。 こちらのモデルは手巻の併用はいらないぐらい良いです。商品になったらぜひアルビトロ様でご購入を(笑)。

クロノグラフを組んでいきます。

精度も良さそうなのでクロノを組んでいきます。クロノグラフの作動はETA7750でも使われているラチェットギアです。

古いモデルではこれしか見た事無いんですけど、他にもあるのかな。ごちゃごちゃと歯車がありますが、秒針はありません。

完成です

以前も書いた気がしますが、プロト感が凄い。とにかく急いで完成させたキャリバーって感じがひしひしと伝わってきます。

構造としてはバルジューとかレマニアでも近い感じがしないでもないモデルもあるような気がしないでもないような気がしますが(どっちよ)、オリジナリティがあるキャリバーです。 逆リューズのクロノグラフ自体がこのキャリバーしかないってのが(多分)証左、しょうさ?面白いですよね。実用でも使える状態です。

針をつけよう。

中の話ばっかで良く分からん!ってコメントはありませんが(そもそもアクセスが無い)、今回は外観も載せます。 商品の紹介にもなりますしね。この写真と、次を比べてみて下さい。

装着しました。

逆リューズの存在感が良いですね。現在はランニングテスト中で、しばらくすれば無事納品できます。 秒針が無いのでクロノグラフを動かして精度を見ています。調子も良さそうでおすすめですよ。・・・いくらで販売するんですかね、ウヒヒ。 いや、いつもご利用ありがとうございます!角煮おいしかったです。どうもであります。


いかがでした?時計のオーバーホールの様子が分かりやすく書いてあります。修理職人の方がこんな感じで書いてくれていると良いですよね。

最後の角煮っていうのはお土産で持って行ったもののことです(笑)

こんな感じでお預かりした時計をオーバーホールしてもらっています。

今回は上の例は松野時計店さんですが、その他にも各分野の修理を得意とされている職人さんと提携していますので、その時計その時計に合った職人さんにお願いをしています。

時計修理にも、当たり前の話ですが各職人さんによってジャンルや修理が可能な範囲みたいなものがあります。

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